厚生労働省
「障害者芸術文化活動普及支援事業」支援センター

アーツサポ東京

概要

アーツサポ東京は、厚生労働省「障害者文化活動普及支援事業」において、
東京都の支援センターとして、社会福祉法人トット基金が実施する事業です。

アーツサポ東京は、障害のある人のさまざまな芸術文化活動を促進するための支援センターです。

障がいのある人々が演劇、ダンス、音楽、
映画、絵画、写真、書など
さまざまな分野で思い思いに、作品をつくったり
身体を動かしたり音を奏でたり
また鑑賞したりと、アーツを楽しめる環境を
みんなでともに作っていかれたらと願っています。

研修会

「支援センター」の活動の柱の一つは、
障害者の芸術文化活動を支援する人材の育成です。

トット基金では、幅広い層を対象に研修会を行っていますので、奮ってご参加ください。
これまでに実施した研修会の報告も、お読みいただけます。

「字幕製作講座」

10月14日(土)14時〜16時 トット文化館

演劇公演に字幕を付けて上演したいという劇団を対象に、字幕製作講座を行いました。

はじめに、アプリの仕組み、字幕の作り方について説明。その後、実際にアプリを使って各自のパソコンで字幕製作。手を動かしながらなので、「わかりやすい!」と好評でした。

スライドに画面を映しながら進めました。一つ一つ丁寧に確認しながらでしたので、確実に理解していただけたようです。

最後に、製作した字幕を使って「ぽん出し」体験。台本を読み上げ、それに合わせてキーを押していきます。

「意外に集中力がいる!」

「タイミングを考えて字幕を作らないと、ネタバレになったりして雰囲気を伝えられない!」

などの感想が上がりました。

本番が楽しみですね。ちなみに以下の公演で字幕付与します。

wonder×works「アカメ」公演
12月15日(金)14時・19時
座・高円寺
全席指定4,500円(前売り当日共通)
http://ta-net.org/event/698

成果をぜひご覧ください!

「盲ろうのお客様への観劇サポートについて考える会」

開催します!

観劇に関心のある盲ろう当事者の体験、通訳体験をお聞きし、参加者とともにサポートについてディスカッションします。

12月17日(日)14時〜17時

トット文化館 2階

参加費:無料

対象:ろうペースの盲ろう者への観劇サポートに関心があり、積極的に取り組む意欲のある方。手話で進行しますので、ご了承いただける方のみご参加ください。

お申し込みフォームはこちら

「ユニバーサルマナー検定3級講座」

10月4日(水)午後、トット文化館に日本ユニバーサルマナー協会の薄葉幸恵講師をお招きして、ユニバーサルマナーの基礎を学びました。受講者は講義の聴講と演習に取り組み、全員が「ユニバーサルマナー検定3級」の認定を受けました。

「ユニバーサルマナー」は、誰もが気持ち良く社会で生活できるよう、自分と異なる人を思いやって、適切な理解のもと行動することです。現在、日本には、高齢者、障害者、乳幼児が、あわせて人口の3分の1に達します。この人々は、ユニバーサルマナーを必要としています。その家族も、周囲がユニバーサルマナーを持って接してほしいと願っているでしょう。ユニバーサルマナーは、「皆のため」のものです。「国籍、性別、年齢、障害の有無にかかわらず全ての人が使いやすいモノとサービスの在り方」が、ユニバーサルマナーの定義です。

ユニバーサルマナーに関して、思いはあるけれども「どうやればいいのかわからない」、「お節介になる気がして行動できない」という人も、少なくありません。方法さえわかれば、サポートしたい人が多いのではないでしょうか。

人と人の違いは、たくさんあります。たとえば右利きと左利きの違い。「少数派」となる左利きの人には日常生活に何かと不自由が多いのですが、右利きの人はそれに気づきにくいのではないでしょうか。自分と異なる人がどんなことに不便を感じているか、どんなニーズを持っているかを知ることが、ユニバーサルマナーの第一歩です。障害者は、社会生活に「障害」が伴う少数派の人々です。障害種別によって、不便やニーズ、不安に思うことは異なります。高齢者は、いろいろな障害種別の統合した状況と言われます。いろいろな点に不便やニーズを感じているということです。こうした人々に対して周囲に求められるのは、さりげない配慮です。義務的な配慮は好ましくありません。ほしいサポートは人により異なりますので、どんなサポートをするかを決めつけず、相手に選択肢を与えることが大切です。

声掛けの際には、相手に「できるか?」を尋ねるのでなく、「何かお手伝いできることはありますか?」と、「自分にできること」を尋ねてください。声をかけるべきか迷ったら、素直に、すぐに行動してください。サポートを断られたら、静かに見守ってください。見守りも重要なサポートです。100点満点を目指さず、歩み寄る姿勢を持ち続けて、臨機応変なサポートを心掛けてください。

研修会には、手話を学ぶ人をはじめ、いろいろな種類の障害を持つ人と付き合いたい、サポートしたいと思う人など、42名が参加して、熱心に受講しました。多数のお申込みをいただき、今回受講いただけなかった方々のために、アーツサポ東京では、11月下旬に再度、同じ研修会を催す予定です。

なお、この研修会は、株式会社ミライロのご協力により、実施されました。

「芸術作品の制作にかかわる著作権とは」

9月13日(水)午後、トット文化館に弁護士の上野真裕先生をお招きして、著作権の基礎と、美術・舞台芸術の作品制作にかかわる注意事項などについて、学びました。

著作権は、プロだけでなく創作物を作成した人すべてが持つ権利です。特許権などのような登録は不要で、創作した瞬間に、権利が発生します。最も重要な権利は、他人に無断でコピーされることを禁じる「複製権」です。権利を持つ人の許諾を受けなければ、誰もその創作物を複製することはできないのです。複数の人による共同創作物の場合は、作成にかかわったすべての個人が、著作権を持ちます。著作権を持つ人は、勝手に①公表されない、②改編されない、③氏名を表示されないなどの権利を持ちます(著作権人格権)。

自作以外の絵画などを商品にする場合は、対象となる作品と利用態様を特定して、作成者と契約を結ぶ必要があります。障害のある人の作品の場合は、弁護士などの後見人を定めることに代えて、家族などが契約者となることもできます。後々問題が起こらないよう、予め、本人や家族とよく話し合い、本人に不利にならないようにしておくことが重要です。

舞台芸術に関しては、音楽では「歌詞と楽曲」、ダンスや演劇では「振付け」が、著作権の保護対象となります。歌手、演奏家、ダンサー、俳優、そして演出家などは、実演者として、「著作隣接権」の対象となります。実演者は、複製権など基本的な部分では著作権者と同様に保護されますが、保護の範囲が狭い部分が一部あります。たとえば、演出をそっくり真似された場合、演出家は上演をやめさせる権利を持ちませんが、契約で、ある程度は予防することができます。

講演に続いて、質疑応答が交わされました。舞台作品作りの現場などから、具体的な質問が次々と出され、その対処法や留意点などについて、明快に解説いただきました。

Q: 映画や演劇を観て、それに関する作品を作って上演することはできますか?
A: 特定の作品から影響を受けたということであれば、その作品の著作権に触れます。

たとえば、聴覚障害者のための字幕、視覚障害者のための点字など、障害者の保護という福祉目的の行為は、無断利用ができるルールがありますが、それ以外では著作権者の許諾をとる必要があります。

Q: 手話狂言の上演で発生する権利は?
A: 台本の作成者が一次著作権を、振付師が二次著作権を持ちます。古典作品の著作権はすでに消滅しています。振付家と俳優が一緒に手話の振付けを作っているのであれば、俳優は、著作権と著作隣接権の両方を持つことになります。

Q: 舞台公演の写真をSNSで公開する人が増えていますが、問題ないのでしょうか?
A: 肖像権の侵害にあたるので、以前は固く禁じられていましたが、昨今は、興業主催者の考え方が変わり、SNSに載せることを観客による広告として、むしろ歓迎するケースもふえてきているようです。この場合は、著作隣接権と肖像権が放棄されたことになります。

Q: 「記念に写真を」と求められて撮影した写真が無断で販売されたら、どうすればよいですか?A: 私的利用に許諾は不要ですが、販売したら「契約違反」となりますので、販売の差し止めを求めることができます。差し止め請求は、第三者でも行えます。損害賠償請求の権利も持ちますが、往々にして被害額の算出は困難です。

研修会には、美術や舞台芸術の創作に携わる人、演劇ファン、教育・福祉の関係者、そして地域の支援者など、30名近くが参加しました。情報保障のツールとして手話通訳とUDトークでが配備されるなか、皆さん、熱心に受講していました。

アーツサポ東京では今後も、研修会、ワークショップなど、情報保障付きの催しを積極的に開いていく計画です。

活動の記録

日付 形態 タイトル 会場 主催者 概要
2017年11月19日 参加 TOKYOみみカレッジ 首都大学東京 東京都 聴覚障害や手話についての理解を深める目的で毎年開かれるイベントに、出展しました。来場者ひとりひとりにアーツサポ東京の活動について説明し、利用を呼びかけました。
2017年11月15日 参加 第2回アーツイベント実行委員会 愛成会 社会福祉法人愛成会 2018年2月開催のブロック合同フェスティバル「表と現」の概要説明につづいて、「アーツサポ東京」およびトット基金の活動紹介を行いました。ワークショップでは、「表」と「現」について各参加者が発表し、「みんなのダンスフィールド」のリードで身体表現にチャレンジしました。
2017年11月15日 参加 ブロック合同研修会 愛成会 社会福祉法人愛成会 ㈱朝日エルの岡山慶子会長より、「効果的な広報周知」に関してレクチャーいただきました。まず、メッセージを届けたい相手についてよく知ること、その相手にメッセージが届きやすい方法を選ぶこと、効果があがりやすいよう内容を整えることなどを、ワークを通じて具体的に学びました。
2017年11月15日 参加 第2回ブロック連絡会議 愛成会 社会福祉法人愛成会 各団体の美術と舞台表現の活動について報告し、ネットワークの作り方、関心の広げ方、行政との連携の進め方などについて、ノウハウを交換したり、悩みや苦労を共有したりしました。トット基金より奈良での公演・ワークショップの報告も行いました。
2017年11月11日 主催 「第17回全国障害者芸術・文化祭なら大会」連携事業 手話狂言ミニ公演・サインマイム 奈良県文化会館 社会福祉法人トット基金 「障文祭なら」に参加して手話狂言のミニ公演を行いました。「サインマイム」につづき、「附子」を披露、衣裳は付けず「紋付」によるデモ公演という初めての試みでした。奈良在住のろう者をはじめ、40人以上の観客に鑑賞いただきました。(活動報告「奈良公演」をご覧ください。)
2017年11月10日-11月11日 主催 「第17回全国障害者芸術・文化祭なら大会」連携事業 手話狂言ワークショップ 奈良県文化会館 社会福祉法人トット基金 和泉流狂言師と日本ろう者劇団団員が、手話狂言を指導しました。参加者は、ろう者と健聴者がおよそ半々。所作を習い、手話と声のセリフをそれぞれ覚えて、合わせることにチャレンジしてもらいました。(活動報告「奈良公演」をご覧ください。)
2017年11月07日 広報 東京都特別支援学校校長会 幹事会 都教育会館 東京都特別支援学校長会 幹事会 「アーツサポ東京」の活動開始について、校長幹事会にご挨拶と趣旨説明。パンフ、公演内容等資料90部提供し、周知を依頼。各ブロックの拠点校を選択し、個別に依頼事項があれば、自主的に活動してください。
2017年10月22日 協力 エル・システマ ガラコンサート 東京芸術劇場 駐日ベネズエラ・ボリバル共和国大使館、東京芸術劇場 他 ガラコンサートのプログラムのひとつである、聴覚障害のある子どもたちによるホワイトハンドコーラスの、参加者選びや振付け指導などに協力しました。
稽古と公演の様子については、活動報告をご覧ください。
2017年10月21日-10月22日 協力 「アート村」作品展 東京芸術劇場 (株)パソナ・ハートフル 「エル・システマ・フェスティバル2017」会場ロビーでの音楽にまつわる絵画の展示会の企画と実施に、協力しました。
さまざまな楽器や指揮棒を手にした、生き生きとした表情の演奏者を描いた絵など15作品が並びました。「アート村」は、パソナ・ハートフル社が絵を描くことが好きな障害者のアートによる就労支援を目的に設立したもので、所属する障害者は同社の社員です。
2017年09月29日 参加 品川区内障害者施設等交流会 福栄会 社会福祉法人福栄会 品川区 品川区内にある障害者就労支援施設等と品川区障害者福祉課が一堂に会し、情報交換を行う交流会。「アーツサポ東京」のPRを実施。100名
2017年09月26日 参加 第1回全国連絡会議 ビッグアイ 社会福祉法人グロー・ビッグアイ 厚労省「障害者芸術文化活動普及支援事業」の全国の実施団体と自治体など50名余りが一堂に会し、厚労省担当官から事業の説明を受けた後、舞台芸術と美術の小グループに分かれて、事業遂行上の課題や解決に向けた工夫等を話会いました。
2017年09月23日 協力 第20回メディア芸術祭 トット文化館 文化庁 サテライト会場でのプログラムとして、手話弁士のついた映画の上映会、映画監督らによる対談、聴覚障害のある俳優によるワークショップなどの実施に、情報保障などで協力しました。
2017年09月20日 参加 第1回ブロック連絡会議 ターナーギャラリー 社会福祉法人愛成会 厚生労働省「障害者の芸術文化活動普及支援事業」における南関東・甲信地方の拠点が初めて一堂に会しました。埼玉県から社会福祉法人みぬま福祉会、山梨県から社会福祉法人八ヶ岳名水会、栃木県から認定NPO法人もうひとつの美術館が、ともに参加しました。
2017年09月20日 参加 ブロック合同研修会 ターナーギャラリー 社会福祉法人愛成会 アーツサポ東京の協力者でもあるNPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワークの理事長・廣川麻子氏による「障害のある鑑賞者への支援について~みんなで一緒に楽しもう~」と題する講演。舞台公演に際する字幕ガイド、手話通訳、舞台説明会など、情報保障のさまざまな方法について、具体的に学びました。
2017年09月20日 参加 第1回アーツイベント実行委員会 ターナーギャラリー 社会福祉法人愛成会 昨年度のイベントにも参加した団体のスタッフなど30名ほどが、会場下見を兼ねて集まりました。2018年2月に開催予定の参加型展示会に向けて、コミュニケーションデザイナー加藤未礼さんをファシリテーターに、「表現」について考えるワークショップが行われました。
2017年09月18日 参加 障害×アート見本市 アーツ千代田3331 NPO法人エイブル・アート・ジャパン 「障害のある人と一緒に芸術文化を通じて人と社会の可能性を探る」ために異分野のネットワークを拡大しようと、官・民の中間支援組織など、20を超える団体のブースが出展。韓国からの訪問団を含め多数の来訪者で、会場は午前から午後まで賑わいました。
「アーツサポ東京」初のお披露目の場として、できたてのリーフレットをブースに並べ、活動計画を説明しました。多くの方々と出会い、情報交換、意見交換を行うことができました。

エル・システマ ガラコンサート2017 「東京ホワイト・ハンド・コーラス(TWHC)」 公演報告

2017年10月22日(日)
於東京芸術劇場コンサートホール
主催=ベネズエラ・ボリバル共和国大使館/東京芸術劇場/(社)エルシステマ・ジャパン

エルシステマとは、「すべての子供たちに音楽教育を受ける権利がある」などとしてベネズエラ・ボリバル共和国が取り組んでいる教育メソッドです。

10月22日(日)東京芸術劇場コンサートホール。いよいよ「東京ホワイトハンドコーラス(TWHC)」本番の日です。この日のために8月から、ほぼ毎週日曜日の午後、稽古を重ねてきた12人のろうの子供たちと、手話指導にあたった日本ろう者劇団の井崎哲也氏、手話通訳の田家佳子さんは、ベネズエラ・ボリバル共和国大使夫人でソプラノ歌手のコロン・えりかさんらと共に、朝9時からゲネプロ(本番通りの舞台稽古)に備えて楽屋入りしています。

前日、子供たちはベネズエラからやってきた「ララ・ソモス」のメンバーたちと初対面しました。二人のろう者(ホワイトハンドコーラス)を含む混成合唱団です。相馬市からも、共演する「相馬子どもコーラス」の元気いっぱいのメンバーたちがやってきました。プロデューサーの菊川さんが代表をつとめる「エル・システマ・ジャパン」は、5年間にわたって被災地を訪れ、子供たちの音楽教育に取り組んで成果を上げてきたのです。楽屋は大賑わい!

4回目になる「エル・システマ・フェスティバル」は今年、エル・システマ出身で、17才という最年少でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコントラバス奏者となったエディクソン・ルイス氏を迎え、至福の音楽を芸劇に集まった聴衆に披露してくれています。

今年度、厚生労働省の「障害者芸術文化活動普及支援事業」により東京都における「支援センター」をつとめているトット基金では、この機会に、コロンえりかさんの紹介で、障害者の社会参加について先進的な素晴らしい活動に取り組んでいる株式会社パソナハートフルにお願いして、芸劇のホワイエに「アート村」の皆さんの作品を展示していただくことを提案しました。大手町のパソナグループ本社ビルでは、障害を持つ多くの社員による作品や製品がいたるところに展示され、販売され、次の企画が進行しています。深沢社長みずから、えりかさんと共にお願いに訪れた井崎氏に社内の活動のようすを紹介し、展示を快く引き受けて下さいました。ホワイエに飾られた二人のアーティストの作品は、明るく生き生きとした色調で「音楽」を描写し、幕間に訪れた観客を癒してくれました。

開演3分前。2階で開演を待つ観客たちがさっと立ち上がりました。秋篠宮妃殿下のご到着です。いよいよ第1部のはじまりです!

舞台いっぱいに広がった相馬っ子たちが、素晴らしハーモニーで「相馬盆歌」「お菓子の歌」などを歌い、次に黒いドレスに身を包んだえりかさんの「被ばくのマリア。。。。そしていよいよTWHCの子どもたちがさっそうと登場しました。見守る1200人の観客。

「葉」「雪」「月のひかり」…。

子どもたちはのびのびと、元気いっぱいに表現力豊かなその手と身体で歌いきりました。喝采です!ホワイトハンドコーラスは、ここ東京でしっかりと種がまかれました。

第2部のララ・ソモスのコーラスは圧巻でした。何年もの稽古とステージを重ねたミュージシャンたち。日本人は到底かなわないリズム感。ブラヴォーの声と万雷の拍手のうちに第2部は終わりました。

そして第3部。相馬の子供たちとエディクソン・ルイス氏の共演が実現しました。指揮は日本で指折りの井上道義さん。闊達なトークで観客の心をつかみます。そして合唱指揮は古橋富士雄さん。子供たちの目線まで体をかがめ、ひとりひとりの心を捉えているのがわかります。

アンコールには、ガラコンサートの出演者全員が再び舞台に登場しました。ベネズエラの国民歌だというリズミカルな楽曲の大合唱です。真ん中に陣取ったTWHCの子供たちも、体でリズムをとって乗っています!平原を馬に乗って走るような、軽やかなリズム…稽古場でえりかさんが説明してくれました。観客も一体となって、皆揺れています… ブラヴォー!の連呼、そしてスタンディングオベイション。感動し、涙を流す観客たち。ひらひらと「見える拍手」に答えて、舞台から子どもたちが胸を張って両手を振り返しています!

東京ホワイトハンドコーラス ガラコンサートは大成功のうちに幕を閉じました。

「第17回全国障害者芸術・文化祭なら大会」連携事業 手話狂言ミニ公演・ワークショップ報告

11月10日。穏やかに晴れた晩秋の古都奈良。奈良県文化会館地下1階「多目的室」において「手話狂言ワークショップを開催しました。平日の金曜日とあってこの日の参加予定は6人。同時開催の美術作品展示会場を訪れる来場者を「客引き」しようと、到着早々参加メンバー総出で準備に入る。

9/1~11/30と、実に3か月にわたって開催されている「第32回国民文化祭・なら2017/第17回全国障害者芸術・文化祭なら大会」も大詰め。開閉会式も行われる奈良県文化会館は、近鉄奈良駅に近く、かの大仏さま(東大寺)や春日大社を擁する奈良公園からも徒歩圏内です。

手話狂言ミニ公演は、11月7日~15日に開催される、障文祭なら大会最大の展覧会ウィーク、題して「みんながHAPPYになる展覧会」に華を添える演劇イベントとして企画したものです。

1階と2階の展示室では、さまざまなアート作品が展示されています。「東アジア障害者アート展~イメージとスピリチュアリティ:表現に宿る霊性~」では、日本、韓国、中国の障害者の作品展示。「モノが物語る意匠(デザイン)の文化史」では、人間のものづくりの歴史と障害のある人の表現のかかわりを探る展示。「県下一品!アートな福祉」は、奈良の福祉施設のイチオシを集めた展示会です。そして「他県連携特別展」として開催されているのが、全国で展開される障害者芸術にかかわる団体の取組みと連動した特別展。各県の厚労省普及支援事業採択団体が出展しています。(秋田、宮城、和歌山、大分、熊本)そしてなんといっても一番の賑わいを見せているのが、6年間にわたり開催されてきたという「奈良県障害者芸術文化祭HAPY SPOT FUTURE」。2階の会場を訪れると、自閉症のアーティストがプログラミングしたというロボットのペッパー君が「ここは奈良県文化会館HAPPY SPOTです」とお出迎えしてくれます。床いっぱいに広げられた色彩豊かなアート作品。親子連れの参加者がくつろぎ、子供はPCに向かって自由遊んでいます。

手話狂言WSには、県の国民文化祭・障害者芸術文化祭課の課長さんはじめ、職員の皆さんも参加して、狂言師の指導に従い大きな声を出してストレス発散(?)してくれました。毎日新聞の女性記者は、予定を大幅に上回る時間を割いて熱心に取材してくれました。上々のスタートです。日本酒発祥の地、奈良の一夜。地元「たんぽぽの家」の皆さんと酌み交わすお酒はなかなかのものでした!

翌11日土曜日。ミニ公演は10時30分開演。2階小ホールでは、朝早くから訪れた奈良在住のろう者の観客が、最前列中央の席におさまっています。予約以上の42人の参加を得て、手話狂言初の「紋付によるミニ公演」、衣裳をつけないぶん、演者の技量も問われることになります。フェスティバルならではの新しい試みとして、古都奈良で発信したこの公演は記念すべきものとなり、今後更に多くの層に、障害の有無やことばの違いにかかわらず誰もが楽しめる演劇として手話狂言を発信していくうえで、先駆的な機会となりました。

午後のWSも定員超えの23人が参加。ろう者の子供たちも、先輩ろう者の俳優の指導に目を輝かせて「手話狂言」に取り組みました。ろう者と健聴者がおよそ半々、所作を習い、大きな声を出し、手を動かす。それぞれが手話と声でセリフを覚え、あわせてみる…。約1時間の講義がおわり、質問タイム。「補聴器をつけて演じることはできますか?」の問いに、演者は「補聴器は要りません。手話に集中できなくなりますから。」

現地解散の後、陽が陰り始めるなか大仏殿へ向かいました。南大門をくぐり、大仏殿へ。暗がりに鎮座まします大仏様は、1200年の歴史を経て、いつの時代にも存在したはずのさまざま個性(障害)を持つ人々の喜びや悩みも、悠々と受け止めて下さっているかのようでした。

エル・システマ・ジャパン「ホワイト・ハンド・コーラス」稽古場訪問記

 「みんな光にさわったことある?」コロンえりかさんの柔らかな声が問いかけます。考えはじめる子供たち。「私は、この詩を書いた人はきっと、光にさわったことがあるのだと思います。」声と同じく子供たちを包み込むような柔らかい彼女の手話を、子供たち一心に見つめます。 「真っ暗な夜に、美しいお月さまの光が差し込んだら、さわってみたくなるでしょう?」

 東京芸術劇場5階の稽古場。本番を3週間後に控え、「ホワイト・ハンド・コーラス」の稽古は佳境に入っています。

えりかさんの声と手話は続きます。「みんな、からだを脱いだことある?」服を脱ぐ仕草の子供たち。「この人はねえ、からだを脱いだことあるんじゃないかな。何かを一生懸命やっているとき、おなかがすいたことも、疲れたことも忘れて、心だけになることってない?」うんうん、と頷く男の子…。

 えりかさんは、ことばに込められた深い意味を「翻訳」して子供たちに伝えているかのようです。ことばから声へ、声から手話へ、手話から音楽へ…。

「…心が先に行って、おいでおいでと手招きしているの。その手はどんな手だと思う?」「ミッキーマウスの手!」「透明人間の手!」「怪獣の手!」口々に答える子供たち。

心が同じなら、詩でも、声でも、手話でも、そして音楽でも、同じことを伝えることができる、とえりかさんは子供たちに理解させようとしている! エル・システマの素晴らしさを垣間見た思いです。

演じること(歌うこと)を英語ではinterpretationという。つまり翻訳。心は日本語にも、スペイン語にも、手話にも、音楽にも「翻訳」できる!

「本番には2000人のお客様がいらっしゃいます。心を合わせて歌えば、その心をお客様に届けることができます…。」

本番のリポートは次回、お楽しみに!

(写真と文 小池紀子)

「障害 × アート見本市」

9月18日、NPO法人エイブル・アート・ジャパン主催による「障害×アート見本市」に参加しました。この見本市は、「障害のある人と一緒に芸術文化を通じて人と社会の可能性を探る」ために異分野のネットワークを拡大しようと、官・民の中間支援組織などに参加が呼びかけられたものです。

会場となった「アーツ千代田3331」のコミュニティスペースには、20を超える団体のブースが並び、韓国からの訪問団を含め多数の来訪者で、午前から午後まで賑わいました。

「アーツサポ東京」も、初めての公でのお披露目の場として、できたてのリーフレットをブースに並べ、活動計画を説明しました。多くの方々と出会い、情報交換、意見交換を行うことができました。

第7回 ホットジェネレーション

アーツサポ東京
アーツサポ東京

ホットジェネレーションのご活動は、どのような経緯で始まったのですか?

鳥居

ボランティア・グループとして活動を始めたのは、1999年12月です。普通の子どもの習い事って、安くないですよね。経済的に余裕のない家庭で習い事に通えない子、発達障害などで集団に溶け込みにくかったり、一般の習い事に通いにくかったりといった子ども達にも、好きな芸術に触れる機会を作ってあげたいと思いました。それで、趣旨に賛同してダンスや歌を指導してくれる専門家を集めて、一緒にボランティア活動を始めたのです。

当初は障害のない子の方が多かったのですが、障害のある子も通えるところだということが、障害児の親たちの間で口コミで広がって、障害のある子が増えていきました。スクールの場所も、最初は品川だけだったのですが、たとえば、藤沢在住でダウン症児のコミュニティでも活動しているメンバーから指導に来てほしいと頼まれて、江ノ島で会場を借りてスクールを開くようになりました。そのような経緯と同様に、主に口コミで活動が広がり、品川、藤沢の他にも、府中、渋谷、恵比寿と、だんだんとスクールが広がっていきました。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

ホットジェネレーションは障害のある子どもも一緒に出演するミュージカル・グループとして知られていますが、最初からそこに焦点を当てていたわけではなかったのですね。

鳥居

はい。今は子どもも成人も障害のある人の方が多いくらいですが、特に「障害のある人」だけを募っているわけではありません。障害のないメンバーは3割程度ですが、その中には、幼少よりホットジェネレーションにてダンスと歌のレッスンを受け、 現在、ホットジェネレーション作品の主要キャストとして活躍する他、外部の舞台作品にも出演している社会人・学生など、多様なメンバーで構成されています。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

運営は、どのようにしているのですか。

鳥居

スタート時からずっと、ボランティア・グループとして活動しています。長い間、任意団体でしたが、2015年に一般社団法人になりました。スクールに通う人の月3000円の会費収入で運営しています。スクール生は定額の月会費を収めさえすれば、どの会場に何度通ってもよいのです。いま全部で、140人ほどのメンバーがいますが、就学前の子どもから中学生までが3割、高校生以上が7割といった比率です。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

全部で週に7回、スクールを開いているのですね。100人以上が通ってくるというと、指導者の数も必要ですね。

鳥居

はい。ダンス、音楽、演技、美術など、それぞれ専門家に講師をお願いしています。

また、公演でも、振付、指導、作曲など、たくさんのプロのアーティストに協力いただきます。

皆さん、障害のある子どもも含めて皆で一緒に過ごすことで癒される、一緒に作品を作り子ども達が舞台で輝く姿を見ると大きな刺激を受けると、喜んで活動に参加してくださいます。「ホットジェネレーションで儲けるつもりはないから」と、皆さんボランティア価格でかかわってくださっているのです。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

通ってくる子ども達の様子は、いかがですか。

鳥居

はじめは、尻込みしている子どもも少なくありません。親にとっても、健常児と一緒に活動できる場として期待がある反面、不安感も大きいようです。私たちは、どのメンバーも、ありのままで受け入れてもらえると感じて、安心できる場であるよう、心がけています。

日頃の練習と並んで、発表の機会も大切にしています。公演に向けてのオーディションは行いません。希望者は全員、出演できるのです。その代り、一緒に良い舞台を作ろう、一緒に頑張ろうと励まして、時には厳しく指導します。舞台に上がることを怖がっていた子どもも、一度公演を体験すると、舞台の喜びを知って、目覚ましい成長を見せてくれます。次の公演という目標が目の前にできるので、厳しい練習もがんばれるのです。

障害のないメンバーの中には、幼少の頃から参加し、成人してからも続けている人が少なくありません。ホットジェネレーションでたくさん刺激を受け、成長できたことに感謝し、恩返ししたい、自分にできる社会貢献をしたいという気持ち、さらに、次の世代につないでいきたいという使命感も、強いようです。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

公演はどのくらいの頻度で行っているのですか。

鳥居

年に3回公演を行っていますが、基本的に毎回新しい作品をつくります。現在レパートリーとしては5つのシリーズがあって、それぞれ2~3作品を持っています。

毎年1回は、国際NGOなどに協力して、その活動のPRになるような作品をつくります。例えば昨年は、東ティモールを支援するNGOの活動について、インドネシアからの独立前後の子ども達のストーリーをミュージカルに仕立てて、演じました。現地の様子についてNGOのメンバーから話を聞き、与えられたテーマについて私たちで調べて台本を書いて、楽曲やダンスでミュージカル作品につくり上げていきます。

こうした活動は、ホットジェネレーションの社会貢献活動と位置づけています。日頃、周囲から助けてもらうことの多い子ども達にとって、ボランティアをする側にまわれることは、特に大きな喜びであり、次へのモチベーションにもなります。

同じ趣旨から、復興支援の物販もしています。東日本大震災で大きな被害を受けた石巻に始まり、熊本地震などの被災者の支援のために、公演のたびに、会場ロビーで現地から調達した物資を販売して、売り上げを現地に寄付しています。これも、メンバーが社会貢献をする側にまわれる大切な機会です。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

お話を伺って、意義の深いご活動だということがわかってきました。課題と感じていることがありますか。

鳥居

私たちは声高に「障害のある子たちのための」とうたっていませんし、公演の宣伝もあまりできませんが、何より、芸術性の高い舞台を目指していますから、公演に来てくださったお客さんが何かを感じとって、次の公演にはお友達や知人も誘って足を運んでくださることに期待をかけています。

これまでは漠然と、自分たちが大切と思っていることをしていけば良いと思って活動してきましたが、次第に、この活動の意義を知ってもらってシステムを広げていきたい、ホットジェネレーションを次の世代に引き継げるようがんばっていきたいと思うようになってきました。どうすればそれができるか――これがいま、最大の課題です。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

ホットジェネレーションの今後の展望を、お聞かせください。

鳥居

障害のある人とない人が互いに刺激を受け合いながら、一緒にダンスや歌を稽古して、一緒に舞台に立つこと。プロのアーティストや指導者に楽しみつつ協力してもらうこと。そして、思いやり合い、寄り添い合う心。こうしたホットジェネレーションのオリジナルな価値が、これまでの長年の活動で、自然と出来上がってきたように感じています。

公演を通じて、観客にそれを感じてもらって、次第に社会でそうした価値観が広がっていって、次の世代に繋がっていくことを願っています。

そのための広報活動の一環として、練習と作品づくりのプロセスを映したドキュメンタリーDVDを作ったりしていますが、もっと工夫が必要だし、そこに労力をかけていけたらとも思っています。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

最後に、ホットジェネレーションの活動に関心を持つ人々に、メッセージをお願いします。

鳥居

まず会場に足をお運びいただき、公演をご観劇いただくことが一番だと思いますが、日ごろの活動はブログなどでも紹介しておりますので、是非ご覧いただければと思います。また、スクールは随時見学や体験レッスンを受け付けておりますので、お気軽にお声かけ頂き、お越しください。

今後はさらに他団体の方々とも協力し合い、ホットジェネレーションとしての活動を多様に広げていきたいと考えています。

「ホットジェネレーション」

ホームページ: https://www.hot-generation-ent.com/
オフィシャルブログ: https://ameblo.jp/hg1999/
E-mail: info@hot-generation.org

【今後の公演予定】

2017年12月16日「X′mas ピアノ&ヴォーカルコンサート」五反田文化センター

2018年2月4日「フレンドシップミュージカル」荏原スクエアひらつかホール

2018年4月15日「第36回オリジナルミュージカル公演」湘南台文化センター

2018年9月16日「第37回オリジナルミュージカル公演」きゅりあん大ホール

第6回 2017アジア・パラアート-書-TOKYO 国際交流展

11月8日から12日まで、豊島区のとしまセンタースクエアにおいて、東アジア3カ国を中心とする障害のある作家による書作品の展覧会が開催されました。

この展覧会は、これまでも「パラアート展」として障害のある人々の美術・書などの作品の展覧会を開催してきた公益財団法人日本チャリティ協会が、4回目の国際展として、書作品に絞って開催したもので、豊島区が共催しました。

会場には、日本、中国、韓国、その他の国で書を創作する作家の作品約100点が展示されました。作風は多様で、作家の個性や思いが表わされたものも多く、墨書の文化の幅広さと奥の深さが感じられます。

日本から紹介された50人の作品の中には、「パラアートスクール」で創作された書も含まれています。「パラアートスクール」は、日本チャリティ協会が30余年にわたり続けている障害者カルチャースクールです。障害のある人が絵画、マンガ、書など、思い思いの創作活動を、隔週の日曜日に専門家のアドバイスを受けつつ行う場で、ここに通うことを楽しみにしている人も多いそうです。

8日午前には、開会式に続いて、オープニングパフォーマンスが行われました。韓国、中国、日本の書家4人が、詰めかけた100人以上の観客と各国の関係者の前で、大きな作品を揮毫しました。韓国の作家は義手で、中国の作家は口に筆をくわえて、日本の作家のひとりはヘッドキャップに筆を取り付けて、それぞれ展覧会に寄せる思いを込めた書を、渾身のパフォーマンスで披露しました。最後にダウン症の書道家が「共に生きる」と力強く揮毫して、会場を沸かせました。

パフォーマンスが終了すると、展覧会場は、待ちかねていた来場者らでたちまち一杯になりました。車いすの人も多く、また、展覧会のために韓国と中国から来日した関係者や作家と、通訳を介して懇談する人々の姿も見られました。会場には、各界著名人による書作品を集めた特別展が併設されています。来場者は、作品の写真を撮ったり、話し合ったりしながら、ゆっくりと足を運び鑑賞していました。

公益財団法人日本チャリティ協会

http://www.charitykyokai.or.jp/shogai
電話: 03-3341-0803, FAX: 03-3359-7964

第5回 クリエイティブ・アート実行委員会

撮影:青木司
振付:Adam Benjamin『OPEN STATE』
アーツサポ東京
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どのような経緯で活動を始めたのですか。

伊地知

1989年にロンドンで、ヴォルフガング・シュタンゲ氏に出会い、学校やデイセンターでの障害のある人を含むダンス・ワークショップを見学して、深く感動しました。さっそく彼を日本に招き、東京大学で講演をしてもらう他、地域でワークショップをしてもらうなどした後、1990年に、障害のある人もない人も共に表現するアート・ワークショップを始めたのです。

アーツサポ東京
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当時は、障害のある人の芸術活動の場として、いま以上に希少な存在だったのではないでしょうか。それから20数年、どのように活動を進めてきたのですか。

伊地知

障害のない人が障害のある人を指導する、というのではなく、お互いが学び合う、触発する表現の場としてのワークショップを、海外のスペシャリストを招いて行いました。回数を重ねていくうち、それがどのように結実するかを皆で具体的にイメージできることも大切だと考えて、障害のある舞踊家を含む海外のダンス・カンパニーの招へい公演を何度か行いました。イギリスで初の身体障害のある舞踊家のいるダンス・カンパニーCandocoも、1999年と2006年に招いています。

また、1993年から毎年、サマー・アート・スクールを開いています。ダンス、音楽、演劇、絵画、造形など、それぞれのワークショップで、午前がファシリテーションに興味のある人達、午後、障害のある人達との合同レッスンというものです。

ファシリテーターの育成には、とくに力を入れています。1994年から2008年まで、半年間ほどの期間のコミュニティ・アーティスト・トレーニング・コースを継続してきました。プロのダンサーがファシリテーター役を務めることができるよう、ダンスの他にコミュニケーション・スキルや教育学の知識を学んでもらう育成システムなども、日本では必要なのではないでしょうか。特に大学の舞踊科などにコミュニティ・ダンス・コースなどがそろそろ出てきてもいいのではないかと思います。

20年以上続ける間に、幸い、優秀なファシリテーターや障害のあるアーティスト達が育ち、皆それぞれに活躍するようになりました。コミュニティ・アーティスト・トレーニング・コースに参加してイギリス留学を志すようになった聾のダンサーには、コミュニティ・ダンス科のあるカレッジも研修先として紹介しましたが、彼女はいま、英国で振付やダンスのファシリテーションを行いつつ、日本でも、劇場に委嘱されるなどして作品を作っています。他にも優れたダンスのファシリテーターが活躍しています。視覚障害のある人とない人とによる造形ワークショップから、視覚障害のあるアーティストがふたり生まれてきたりもしています。

参加者を募集して開くワークショップやサマー・アート・スクールの他に、「響と踊ろう」というプロジェクトは後述するインテグレイテッド・ダンス・カンパニー響-Kyoが行なうダンス・ワークショップですが、公募型の通常のワークショップの他に、アウトリーチ(出前ワークショップ)も行っています。私達が特別支援学校や施設を訪れて、生徒や利用者と一緒にダンスをします。学校の先生方や施設のスタッフの方々などがダンス・ワークショップの考え方と手法を学ぶ機会にもなっています。障害のある人が身体表現の機会を持つためには、ファシリテーターがとても重要な役割を果たすので、こうした活動は今後も続けていきたいと思っています。

撮影:青木司
振付:Adam Benjamin『OPEN STATE』
アーツサポ東京
アーツサポ東京

そうした長年のご活動の積み重ねから、「インテグレイテッド・ダンス・カンパニー響Kyo」が生まれたのですね。

撮影:青木司
振付:Didier Theron『Les gens de tokyo』
伊地知

これまで参加体験型のいわゆるワークショップを中心に活動をして、時々、海外のインテグレイテッド・ダンス・カンパニーなどを招聘したり、日本の若手振付家達と障害のある人達との単発のダンス公演プロジェクトを行ったりしてきました。振付家や演出家は、障害のある人たちとの活動から刺激を受けて、新しい表現の方法を探し、見つけていきます。そこに、新しい可能性を感じ、恒常的に活動するダンス・カンパニーをつくりたいと考えたのです。プロのダンサーと身体障害のある人達とで構成されるカンパニーとして、2014年に「響」を立ち上げました。将来的にはさまざまな障害のある人にも加わってもらいたいと思っていますが、まずは、身体に障害のある人と障害のない人10人くらいでスタートしました。毎年、異なる振付家に作品を委嘱して、上演しています。

今年の2月には、ディエィエ・テロン氏に構築的コンテンポラリー・ダンス「les gens de tokyo 東京の人々」を、スズキ拓朗氏に宮沢賢治の小説を演劇的なダンス作品に仕上げた「パワポル」を作ってもらって、都内の文化施設でダブルビルで上演しました。作風の違いが互いを引き立て合う、面白い舞台になったと思います。2日の公演とも観客席は満員で、たくさんの人に喜んでもらえましたし、テレビや新聞にも取り上げられました。だんだんと、多くの人に「響」を知ってもらい、関心を持ってもらえるようになってきたと思います。

今年はまた、9月にインテグレイテッド・ダンスの盛んなイギリスでツアーを行いました。ブリストルとプリマスの劇場で、アダム・ベンジャミン氏振付の「Open State」と岩淵多喜子氏振付の「Border」を再演したのです。どちらの公演も大きな反響を巻き起こし、手応えを得ました。次は、ディディエ・テロン氏の母国であるフランスで、フェスティバルに参加して彼の作品を上演できたらと考えています。地方公演も増やしたいのですが、なかなか手がまわっていません。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

運営のご負担はさぞかし大きいことと思います。もっとも苦労されているのはどんな点ですか。

伊地知

月並みですが、資金繰りです。企業の協賛金が、リーマンショックで一気にしぼんだまま、戻りません。近ごろは企業自身が文化事業をメセナ活動として展開する企業が増えてきましたね。クリエイティブ・アート実行委員会とダンス・カンパニーの運営を、経済的にどう成り立たせるかは、いつも一番の課題です。

日本の助成制度は、プロジェクト支援で経費の半額助成といった形で自己資金を持たないと運営できないケースがほとんどです。そういう意味で、最近の文化庁の委託事業制は自己資金を求められないありがたい制度なので、他の助成制度も委託事業制に移行してもらえることを願っています。イギリスなどの助成制度でうらやましいのは、運営助成金が芸術団体に提供されることです。そのことによって家賃や光熱費の負担を軽減し、リサーチ活動などで団体の基盤を固めたうえで、メンバーをしっかり育成していくことができるのです。

障害のある人がダンサーを志す場合、ダンスの基礎が身についている人は少ないので、基礎から訓練することになります。また、ダンスのボキャブラリーを作っていくには長い時間がかかります。決して収益のあがる活動でないことは明らかなのですから、人を育て、団体を運営していくファンダメンタルな部分に投資しなくては、この分野は育ち得ないのです。日本でも文化の基盤整備に投資してほしいと思います。

撮影:青木司
振付:岩淵多喜子『Border』
アーツサポ東京
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最後に、めざすところと、今後のご計画をお聞かせください。

伊地知

近ごろ美術分野では、障害のある人の作品が「アール・ブリュット」などとして紹介され、独自の面白さが認められるようになってきました。パフォーミング・アーツでも、独自の魅力を提示していかれたらと思います。障害のある人もない人も皆が互いに学び合いながら、それぞれの特徴を活かした面白い作品をつくっていきたいと思います。なにより私自身が、面白いダンスを観たいのです!

来年の3月3日と4日には、吉祥寺シアターで第6回公演を行います。今年と同様、海外と国内のふたりの振付家に作品を委嘱しています。今年は、日本からは注目の若手振付家である平原慎太郎さん、海外からはスペインで活動しているThomas Nooneという方を招聘して作品をつくります。11月末からリハーサルを始めます。期待にこたえる作品になると思います。今後も人々に感動して頂けるダンス作品をつくっていきたいし、「こういう表現があるのか!!」といった思いがけない試みなどもしていきたいと思います。

「クリテイティブ・アート実行委員会」(ミューズ・カンパニー)

Homepage: http://www.musekk.co.jp/
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Twitter: https://twitter.com/artmusekk
TEL: 03-6426-5182 (10:00-18:00)
FAX: 03-6426-5183
E-mail: musekk@aol.com

第4回 手話パフォーマンスきいろぐみインタビュー

アーツサポ東京
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「きいろぐみ」の活動について教えてください。

多くの一般の聴こえる人に、ろう者と手話の立場から夢を配るエンターテイメントとして、手話パフォーマンス活動を行っています。

手話で話すと、音声言語より、目の前に立体的に情景が浮かびやすいと思いませんか?手話は、表現力に富んだ魅力的な言語です。舞台でそれを表現することで、その特性を、多くの聴こえる人たちに知ってもらいたいと思って、活動しています。

私たちは、聴こえない人は、たとえば、日本で暮らす外国人がそれぞれの言葉を話しているのと同じ「言語的少数派」だと考えています。多くの聴こえる人が、ケンカしたり仲間とはしゃいだりするのと同じように、聴こえない人たちも、同じように手話を使って、様々な会話を交わし、怒ったり笑ったりしているのです。手話という言語世界を持ち、聴こえない人たちは、聴こえる多くの人たちと同じように街で暮らしているのです。私たちは、そう考えるろう者と聴者が共に活動しているのであり、ろう者も普通の人と同じだと思っていますし、人としての大きな枠で考えた時、障害者としては位置づけていません。そんなごく普通の感覚を持ったろう者が、自分たちの言葉でごく普通に表現活動すること、その姿こそを、多くの人に見てもらいたいと思っています。

アーツサポ東京
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なるほど、ですね。活動を始めたのは、どんな経緯からですか?

第1に、先ほどもお話したように、手話が視覚的な豊かな言葉であり、それを見た聴こえる私たちもまた、その高い芸術性に感銘を受けることができるということですね。これを多くの人に伝えることは、聴こえない人だけでなく、聴こえる人にとっても大きな宝物になると感じたからです。

2番目に、かつて手話通訳を手掛けたことのある舞台での経験から、気づいたこともあります。あるロック・アーティストのステージで、私が手話通訳をした時、終演後にアーティストから「僕のステージじゃなくなってしまった」と言われたことがあります。お客さんがアーティスト本人でなく通訳者の方に目を向けてしまい、アーティストの方が目立たなくなってしまった面があったのだと思います。私はこの時、手話を舞台に付けるということは、演出意図をも揺るがす大きな意味を持つものなのだと感じました。

3つ目に、女性講談師の舞台の手話通訳をした時も、次のようなことがありました。通訳を見て、感激した聴こえないお客さんから「手話のおかげでよくわかって、とても楽しかった!」とうれしい感想をもらったのですが、同時に「でも、講談師のことは、顔さえ良く覚えていない」と言われたのです。

そんな経験をする中、それであれば、演じる人と手話をする人を同一にすれば良いのではと、自分たちでグループを立ち上げました。1989年のことですから、もう28年間も活動していることになります。

アーツサポ東京
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具体的には、どのような活動をしているのですか?

毎年、冬にはライブハウスでの手話ライブ公演、夏にはミュージカルの舞台を行っています。それ以外の時期にも月に1~2回、ステージが入ります。手話パフォーマンスでは、演者の手の語りが見える300人程度までの客席数の会場が適しますので、ホールの場合はそのくらいの規模の会場を探すように心がけています。お客さんともっと親密に触れ合いたい場合は、ライブハウスなども使わせてもらいます。先日は、三軒茶屋のライブハウスで「ハッピーハロウィンパーティー」を開きました。聴こえない方と聴こえる方がおよそ半数ずつ来てくださり、手話の分かる方は手話の歌やせりふを、手話の分からない方も、音声で内容のすべてを楽しんでいただいています。

公演ごとに毎回、オリジナルの台本を書き、皆で手話をつけていきます。まず、手話のセリフを、一つ一つ手話に翻訳していきますが、その時点で、元の台本の日本語の語順や文節が、大きく変わってしまいます。ですから、その後、また翻訳された手話に合う、音声のセリフとしての良い日本語を改めて組み立てなおし、舞台を作っていきます。

手話を舞台のセリフとして扱い、それと同時に、音声のセリフも、手話が分からない人のために、しっかりと楽しめる形で作り上げていく。これが、私たちの大事にしていることです。ですから、舞台が完成した時には、元の台本の日本語の形は消え去り、新しい手話とそれに合わせた愛情あふれる日本語の舞台が出来上がっているわけです。

アーツサポ東京
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メンバーは何人くらいで、どのくらいの頻度で稽古をしているのですか?

「きいろぐみ」は公演ごとにプロジェクトを組む形で、作品を作り続けている劇団です。公演によって出演者の数が異なり、10人の時もあれば30人の時もあります。聴こえないメンバーと聴こえるメンバーが常に混在しており、通常、だいたい半々の割合で作品に参加しています。1回の舞台に10人前後のスタッフが舞台裏を支えています。

「きいろぐみ」では毎年、夏の手話ミュージカルで出演者を一般公募しています。これには、関東周辺のほか、秋田や仙台・神戸など各地から申し込みがあり、参加したいという方には全員舞台に立っていただいています。およそ20人から多いときには30人くらいが参加してくれます。多くの人は、ひと夏の熱い経験として申し込んで下さるようですが、その後も長く活動を続けてくれる人は、年に4~5人といったところでしょうか。今年の一般公募では「前からあこがれていたきいろぐみに参加してみたい!」と決心して、大阪から引っ越してきた20代の女性もいました。とてもうれしかったです。

「きいろぐみ」の公用語は日本手話ですので、聴者もコミュニケーションを手話でとれることが、活動の条件になってきます。と言っても、例えばひと夏2~3か月、毎週練習に通ってくれば、向いている人なら、ペラペラと手話で話せるようになる方もいて、励まされます。その後はすべてのステージが手話での取り組みになりますので、聴こえるメンバーは手話へのたゆまぬ努力が必須ですね。(笑)

日頃の活動は、メンバーそれぞれ違い、会社員などとしてフルタイムで働いている人もいますし、「きいろぐみ」の活動をメインにしてアルバイトで収入を補う人もいます。 公演ごとにキャストとスタッフのチームをつくり、週に最低でも2回集まって稽古や打ち合わせなどを繰り返しています。

中嶋

皆で一緒に稽古をするのは週2回でも、その他の日も、個人の稽古は欠かせません。私たちは日常に手話を使って生活していますが、聴者のキャストは、手話も音声のセリフも覚えなければならない分、より苦労が多いと思います。聴こえる人にとっては、手話は第二言語なので、ついていくのは、とても大変だと思います。

蓮子

私は、最初は出演者として「きいろぐみ」の一般公募に参加しましたが、自分にはスタッフが向いていると思い、マネージャーとしてプロデュース会社の手話あいらんどに入り、正社員として仕事をしています。
(今回は、蓮子さんに、インタビューのすべての手話通訳をしていただきました。)

アーツサポ東京
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長く活動してきて、変化を感じる点がありますか?

私たちの手話の舞台には、最初は、手話で話す聴こえない方や、手話に関心のある聴こえる方が、多く来てくださっていましたが、一度来たお客さんが「楽しいから一緒に行こう」と、次は家族や恋人、友達や知り合いを誘ってきてくれるようになり、手話を全く知らない聴こえる人や、もっと手話の作品に触れたいという聴こえない方々の両方で客層が広がりました。当初目指した「ろう者と手話の立場から、多くの聴こえる人にも手話の感動の輪を広げたい」という願いが、少しずつ現実のものになっていくようで、とてもうれしく思っています。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

元美さんは、どのようなきっかけから、「きいろぐみ」に加わったのですか?

中嶋

子どもの頃から難聴だったのですが、小さいころはそれに気づいていませんでした。大きくなって、詳しい検査をした時にわかったのです。ただ、以前から、よく聴こえなくても友だちに合わせて笑ったりして、自分の感情を外に表すことがあまりありませんでした。自分らしさを出すことができなかったのです。高校1年の時に、完全に失聴したのですが、それをきっかけに、手話に出会い、ろう学校に転校もしたことで、むしろ感情を自由に表現できるようになり、解放された思いでした。私にとっては、難聴の頃より今のほうが自由だし、気持ちも楽になりました。

小さい頃からバレエを習っていて、失聴して、もう踊れなくなるのでは?と思った時、母親が「きいろぐみ」の活動を知って勧めてくれたのが、7年前です。それからずっと、「手話パフォーマンスきいろぐみ」が中心の生活です。学校を卒業してからは、「きいろぐみ」の舞台や芸能活動のほか、手話あいらんど(注:「きいろぐみ」のプロデュース会社)での手話講座や、手話パフォーマンス講座の講師もしています。すきま時間でアルバイトもしています。

手話ミュージカルなど「きいろぐみ」の舞台では踊る機会も多いので、バレエの経験がとても役立っていると思います。踊ることは今でも大好きです。でも、手話の歌は、踊りというより言語ですから、振付けを覚えるだけではだめで、手話の正確さというか、言葉としての的確な表現がないと意味が通じません。

アーツサポ東京
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手話の正確さという点をもう少し聞かせてください。

中嶋

この頃、聴こえない人とともに楽しみたいと、手話パフォーマンスをするグループが増えてきました。音声の歌詞に合わせて一つ一つの手話単語を並べただけの手話表現も、たくさん見かけます。でも、実はこれでは、手話が正確に翻訳されていないのです。こうした表現は、てにをはのない日本語の文を聞かされているのと同じで、手話を見ている聴こえない人には、意味が伝わらない。手話には、文法や表現の基本ルールがあるので、それに気を付けて、自然な手話表現をしてもらえたら、もっと素敵な歌になると思います。

手話パフォーマンスや手話の舞台では、ろう者のナチュラルな手話表現を学ばせてもらい、それを生かすことがとても大切だと思います。私たちが日頃、ドラマなどを見たり聞いたりしても、日本語に違和感があれば、ストーリーをシンプルに楽しめなくなってしまいます。それと同じように手話に違和感があれば、手話で作り上げられた作品の魅力は、十分に伝えられなくなってしまいます。心を込めて作品づくりをするということの中には、手話へのしっかりとしたリスペクトも含まれていなければ、本当の意味で、聴こえない人と手を取り合えなくなってしまいますので、その辺は、聴こえる私たちが、日々努力を重ねなければいけない点ですね。

また、ろう者の使う手話は年代や性別でも異なりますし、状況によって変わる部分もたくさんあります。丁寧な表現や、スラングもあります。音声話者の言葉も、同じですよね。私たちは、よく映画やドラマで取り入れられる手話の監修の仕事をいただくのですが、その場合は、登場人物ごとにモデルを置いています。例えば、女子高生のろう者の役なら、同年代のネイティブ手話話者の女の子、耳が聴こえて音声と手話の両方で話す男性の役なら、同年代の手話を学習中の人がモデルをつとめるなどして、ドラマの中でリアリティのある手話が生かされるよう、工夫をしています。

アーツサポ東京
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手話も言語ですから、やはり奥が深いのですね。ところで、元美さんの目標は、何ですか?

中嶋

2020年には東京パラリンピックが日本で開催されるということで、とても楽しみにしています。私も、そうした公式舞台や関連舞台に出演し、堂々と手話パフォーマンスをしたいです。リオのパラリンピック閉会式では、日本からいろんな障害のあるアーティストが登場して、迫力のあるパフォーマンスを演じ、感銘を受けました。私もそのステージに加われたら嬉しいです。

また、2021年・2025年のデフリンピックが、日本でも注目を集めています。手話パフォーマーとして心から応援します。こちらの舞台でも様々な手話パフォーマンスを披露できればと思います。

たくさんのアスリートの皆さんの活躍を、お祈りします。

手話パフォーマンスきいろぐみ 2018新春手話ライブ
「目指せ東京 2020 ~ 僕らはサインサポーター!!」
カウントダウン2

http://www.kiirogumi.net/croco2018/

【日時】
2018年1月12日(金)、13日(土) 開場18:00  開演19:30
1月14日(日) 開場12:00  開演13:00
※開演から終了までおよそ2時間半。(開演前にインフォメーション等あり)

【チケット】

≪前売り≫
大人 4,000円  18歳以下(または22歳以下の学生) 3,500円(税込)
※大学生・短大生・専門学生は『学生証』をご(提示)持参ください。
≪当日券≫
一律 4,500円(税込)

【チケットお申込み】http://www.kiirogumi.net/croco2018/ticket/

きいろぐみ

http://www.kiirogumi.net/
FAX: 03(3487)0753

第3回 サイン アート プロジェクト.アジアン

アーツサポ東京
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「サイン アート プロジェクト.アジアン」のご活動は、どのような経緯で始まったのですか?

大橋

1999年に俳優座の「小さき神のつくりし子ら」という芝居でろう者の女優のオーディションがあって、私が舞台に立つことになりました。実は、私は女優になることを特に夢見ていたわけではないので、この作品だけと思って取り組んだのですが、周りの皆さんはとても熱心にサポートしてくださいました。それで、公演が終わる頃には、せっかく道を作っていただいたのだから続けてみようと思うようになりました。

当時、日本には、ろう者のプロ女優はいませんでした。耳が聴こえないのに音楽に合わせて歌い、踊り、ミュージカルの舞台に立つということが、イメージしにくかったのでしょう。いくつものプロダクションの門戸をたたきましたが、どこも、ろう者の俳優を受け入れたことがないのでやり方がわからないと、受け入れてくれませんでした。

そこで、アメリカに行って、ダンスや演劇の勉強をしました。合わせて2年くらいの期間です。帰国して、入れるところがないのなら自分でプロダクションを立ち上げようと決心して、2005年に、「サイン アート プロジェクト.アジアン(SAP)」をつくったのです。ろう者が主体のミュージカル企画として、日本で一番乗りです。

アーツサポ東京
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12年前のことですね。どんな活動から始めたのですか?

大橋

2006年に自分の半生を描いたオリジナル作品の ”Call Me Hero!”で、旗揚げ公演を行いました。聴こえる人と聴こえない人でキャストを組んだのですが、最初は本当にたいへんでした。聴こえる人はろう者のことがわからない。聴こえない人はダンスの経験が少ないと、人前で踊るのを恥ずかしがる。手話のできない人も多い…。でも、一緒に舞台をつくるのですから話し合わざるを得ません。無理にもやっているうちに、コミュニケーションできるようになって、だんだんと良いチームになりました。

手が雄弁にセリフを語る手話は、踊って歌うミュージカルと相性が合うのです。私自身は、舞台に立ちつつプロデュースや製作、手話歌振付もひとりでやったので、たいへんで、終わった後は頭が真っ白で、もぬけの殻のようになってしまうほどでしたが、でも、中身の濃いミュージカルが出来上がりました。初舞台の日にスタンディング・オヴェイジョンをいただいて、とても驚きました。出演者も皆、感動していました。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

順調なスタートだったわけですね。その後も次々と作品を作ったのですか?

大橋

ミュージカルを作るには、とてもお金がかかります。企画の都度、助成金やスポンサーを探して、それを頼りに作品を作るのですが、だんだんと資金難になって、手話朗読劇など、小規模な活動が続いた時期もあります。

2011年に4年ぶりで作品ができたのですが、上演予定の直前に、東日本大震災が起こりました。いろいろな意見を言う人がいて、こんな時にミュージカルをやっていいのかと私も悩みましたが、三谷幸喜さんと野田秀樹さんが、「劇場の灯を消してはいけない」とメッセージをくださって、勇気づけられました。予定どおり、世田谷パブリックシアターで上演し、大成功を収めることができました。

また、2015年には、原爆当時の広島と長崎を舞台にした「残夏-1945-」を東京、広島、長崎で上演しました。幸い好評でしたし、私たちも手ごたえを感じたので、今年、東京の座・高円寺で再演しました。それをきっかけに劇場から、手の表現のワークショップをやってほしいと依頼があるなど、地域での活動も広がっています。

アーツサポ東京
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そして、いよいよ「夏の夜の夢」へと、つながるのですね。

大橋

はい。1年に2作品の公演をするのは本当に大変なのですが…。

この作品は、2年前にニューヨークのブロードウェイでミュージカルを観た時から温めてきた企画です。ロサンゼルスに拠点を持つDeaf Westという劇団の、”Spring Awaking”という作品です。ロック・ミュージカルの面白さを知り、自分でも作ろうと決めたのです。

演出の野崎美子さんと一緒に企画をつくりキャストを選びました。障害のない人たちはあるていど決まったのですが、障害のあるキャストを探すのには、少し苦労しました。障害のある人が演劇人としてプロを目指すのは簡単でないので、障害のない人に比べてどうしても人材が少ないのです。ダンサーは少しずつ出てきましたが…。レベルで妥協したくないので、慎重に選びました。このミュージカルが、人材が増えるきっかけになると良いと思います。

ひと月後の公演に向けて、いま、毎日のように稽古しています。障害のないキャストは、ダンスや芝居で日頃から身体を使ったコミュニケーションをしているので、手話を覚えるのがとても速いです。一度の作品だけで手話との縁が終わってしまうのはもったいないと思います。聴こえる人と聴こえない人が一緒に作品を作るには、毎回の稽古に、手話通訳者が2~3人は必要なので、演劇のこともわかっている彼らが手話を学んで、舞台稽古で手話通訳ができるようになってくれたらと思います。演劇人のための手話講習を、どこかでやってくれるといいのですが…。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

アメリカで修行したり観劇したりされて、日本との違いを感じますか?

大橋

一番違いを感じるのは、文化です。日本では、有名な俳優や演出家が出るのでないと話題になりませんし、海外で評価されて初めてその作品が注目を集めるといった傾向もあります。アメリカにはそもそも音楽やミュージカルの文化が根付いているので、作品の実力で評価が決まります。批評もしっかりされます。そもそも人と違うことが良しとされる文化も、日本と違います。日本では、どんな演劇やミュージカルも、よほどお金をかけたものでない限り、チケットが完売するほどの観客を集めることも、メディアに取り上げてもらうことも、難しいです。作品の内容には自信があるので、たくさんの人に見てもらえたら嬉しいですが…。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

「サイン アート プロジェクト.アジアン」の今後の計画について、お聞かせください。

大橋

今は「夏の夜の夢」の初演に向けて熱中しているので、まだ具体的な計画はありませんが、来年は充電しながら企画を立てて、再来年に新しい作品を作りたいと考えています。長く続けていくことが大切だと思っているので、特に2020年に向けてという気持ちはありません。将来的に、障害のある人たちで一緒に劇団活動をしていきたいと思っているので、そのための稽古場と使いやすい劇場が、東京オリンピック・パラリンピックの文化プログラムをきっかけに作られたらと、願っています。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

最後に、「夏の夜の夢」の公演に向けて、メッセージをお願いします。

大橋

「人は目で見ず、心で見る」

アンリミテッド×ロックカーニバル「夏の夜の夢」の空間の中で障害のあるなしにかかわらず、隣の人と一緒に笑ったり、ハイタッチしながら、演劇を心から楽しんで頂きたいと思います。その空間作りを、演劇職人である私達がみなさんの心の中までお届けいたします。

「サイン アート プロジェクト.アジアン」

http://www.sapazn.jp/

E-mail: info@sapazn.jp

Fax: 03(5378)8026

第2回 演劇結社ばっかりばっかり

アーツサポ東京
アーツサポ東京

どのような経緯で、「ばっかりばっかり」のご活動を始められたのでしょうか。

鈴木

僕がやっていた劇団の稽古場を、視覚障害・全盲の美月が訪れて、役者として参加したいと言い出したのをきっかけに、改称して、芝居の内容も福祉寄りに軌道修正しました。ちょうど10年前のことです。どのような工夫をこらせば、視覚障害者が役者として加わり、また、観客として楽しむこともできるかを、美月の視点をもとに一つずつ試行錯誤で考えているうちに、だんだんとコンセプトと型ができてきました。

アーツサポ東京
アーツサポ東京

ご活動は、多岐にわたりますね。

美月

はい。私たちは、障害のあるなしにかかわらず、誰にでも楽しんでもらえるエンターテイメントを目指しています。実力のある役者さんに、稽古から本番までの一定期間、時間をつくってもらうのに必要なギャラを支払えるだけの資金を集めるのは簡単ではありません。ですから最近は、芝居より比較的自己資金の掛からない朗読やコンサートなどの機会も増やしています。地方の自治体やグループに呼んでいただくこともありますし、高齢者施設など、様々なところに招かれます。わたしはもともと音楽出身で、作曲もしますし、ラジオパーソナリティの経験などもあるので、個々のニーズにあったコンテンツ制作をするのに役立っているようです。

たとえば、2015年の舞台「悪い人じゃないんだけど」は、もともと5人で演じる1時間のオムニバスコントなのですが、役者とコントの本数を調整したり、私の歌や講演、点字朗読を織り混ぜたりすることで、各イベントに合った出し物に変化させていきました。

昨年は新潟県高等学校総合文化祭ボランティア部門に招かれました。今年も、いろいろなバリエーションで公演しています。

アーツサポ東京
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「ばっかりばっかり」の舞台では、どのような工夫をしていますか?

鈴木

わかりやすい言葉を大切にしています。最近では声優さんですら、正しい話し方ができない人が少なくありません。セリフをゆっくり、はっきり、また強調する言葉をしっかりと発することは、視覚障害のみならず、難聴や精神障害のお客さんの為にもなるはずです。

美月

視覚に障害のあるお客さんのためには、開演前の舞台説明を毎公演で行なっていますし、脚本や演出の時点から、台詞や足音などを工夫しています。たとえば「それ」とか「あそこ」など、目で見ていなければわからないようなセリフは用いず、具体的な言葉に置き換えるようにしています。この工夫により、「ばっかりばっかり」のお芝居には特別に“音声ガイド”は付けていません。私自身、全盲の立場での観劇を通して、生のお芝居は片耳をイヤホンなどで塞がず、両耳で舞台を丸ごと味わえるほうがずっと楽しいと感じていますので、見えないお客さんたちにもそういうお芝居を提供できたらと思っています。…もちろん、映画や他の劇団さんの舞台などでは、私も大いに音声ガイドを活用させていただいていますが。

鈴木

聴覚障害のある人のためには、字幕をつけています。役者の顔の上に、漫画の吹き出しのように字幕を浮かび上がらせ、その吹き出しの枠の色と役者の衣装の色を合わせて、誰のセリフか一目でわかるようにしています。

こうした工夫で、障害のある方も一緒に楽しんでもらえる舞台になるようにしています。「楽しいからまた行きたい」というお客さんが増えていくことが、何よりの目標です

アーツサポ東京
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難しいと感じていることは、ありますか?

鈴木

「ばっかりばっかり」は、外部から一定期間、役者に集まってもらって芝居を作ります。若いお客さんを増やすためにも、若い役者に舞台に立ってほしいのですが、所属事務所が、一定期間の拘束を必要とする舞台をいやがるケースが多いようです。また、アルバイトの口そのものが少ない視覚障害者は、正職についていることがほとんど。芝居作りにかかわるためのまとまった時間を作ることが特に難しいという問題もあります。「芝居をやってみたい」という若い人は少なくないのですが、「いつか芝居で食べられるようになること」を夢見て、訓練を続けていくことができる人は極めて少ないのが実情です。

美月

お陰さまで固定客というか、「ばっかりばっかり」のファンの方は増えてきたのですが、長く続けている間にお客さんがご高齢になられたり、あるいは家族の介護などで、外にでにくくなった方などもおられます。若いお客さんも増えると良いのですが…。

また、これは歓迎すべきことなのですが、最近視覚障害者向けのエンターテイメントが増えてきたので、かえってお客さんが減っているという側面もあるかもしれません。

アーツサポ東京
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「ばっかりばっかり」の展望と今後の計画について、お聞かせください。

美月

配慮が必要なお客さんに対するサポートは、私たち自身の手で、個別に行なっています。アットホームな雰囲気のなかで、一人一人への細やかな気配りを続けていくことを大切にしたいと思っています。その意味では、今の規模を保てた方が良いようにも思います。もちろん、チケットがたくさん売れてお客さんが増えれば嬉しいのですが。

鈴木

プロ劇団として安定し、障害のある役者さんを雇えるようになることも目標ですし、うちが頑張ることによって他の劇団がバリアフリー化を進める一助になれれば。芝居に音声ガイドや字幕、手話通訳がつくことが世間で当たり前になれば、その製作にモニターなどで障害者が携わっていくこともできるでしょう。社会の意識が変わって、職業機会を提供できるようになり、若い障害者演劇人を育てることもできるようになればと願っています。

美月

直近では、11月17日から20日まで、板橋区志村坂上の龍福寺会館で、「悪い人じゃないんだけど…アナザー」の公演を行います。障害者、特に視覚障害者関連のあるあるネタをオムニバスコントに仕上げるシリーズの新作です。悪気はないって判るからこそ困ってしまうとんちんかんな配慮など、笑いながら気づいてもらえる、障害のある人とない人との架け橋的な作品になる予定ですので、どうぞご期待ください!

アーツサポ東京
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最後に、「ばっかりばっかり」の活動に興味を持つ人々に、メッセージをお願いします。

鈴木

まずは、僕たちの舞台をご観劇ください。どんな障害をお持ちの方にも、障害のない方にも、できるだけ色々な皆さんに楽しんでいただけるよう日々工夫しておりますので、それを体験しがてら作品をお楽しみいただけたら嬉しいです。

美月

それと、障害の種別や有無にかかわらず、役者として、スタッフとして、私たちの劇団で一緒に活動していただけたら嬉しいですね。仲間、大募集中です!

「演劇結社ばっかりばっかり」

http://www.bakkaribakkari.net/

TEL: 090-3818-6424(10時から18時)

E-mail: otegami@bakkaribakkari.net

第1回 NPO法人アンハードノート・ピアノパラ委員会

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「ピアノパラ」のご活動には、20年近い歩みがあるそうですね。どのような経緯で、活動を始められたのでしょうか。

迫田

大学で教えた卒業生から、ピアノ教師として、視覚障害のある生徒さんの指導について相談を受けたことをきっかけに、ピアノの道を志す障害者の支援について考えるようになりました。指導者が技術指導にとどまらず、障害について十分な知識を持って臨むことが何より重要と考え、生活全般について学び合う研究会を医学者や指導者と結成して、ともに勉強しました。障害のある音大学生が就職先探しに苦労していたので、自分たちで音楽教室を開くよう後押しし、定期演奏会の開催を手助けしたこともありました。

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こうしたご経験を経て、「ピアノパラ」の第1回大会が開催されたのですね。

迫田

そうです。質の高い演奏の、国際的なコンサートにしたいと、2005年に第1回国際ピアノパラリンピックを、横浜で開催しました。海外を含め14カ国から、94名が出場しました。

音楽家仲間、海外の友人・門下生らが出場者集めに奔走し、また審査員を務めてくれました。音楽雑誌や福祉関係の媒体などで広報し、観客を集めました。ソロプチミスト、ライオンズクラブなどの協力にも、大いに助けられました。

大会の課題曲は、「さくら さくら」でした。国内の出場者はみな、原曲のイメージを崩さない静かなメロディーを奏でるなか、中国の男性が機関銃のような激しい演奏をして会場を驚かせました。国際大会にしたことで多様性がより豊かになったと思います。大会が大きな話題になったので、出場者に自信がつき、さらに努力しようという意欲につながりました。海外からの出場者は特に練習を重ねて良い演奏を聴かせたので、国内出場者にも刺激となったようです。

親戚から反対され消極的な気持ちで子どもを出場させたという親御さんは、大舞台での演奏に気持ちを高揚させ、早くも次回の出場へと意気込む子どもの姿を見て、出場させて良かったと深く息をついていました。

大会の様子が新聞でも報じられたので、その後、ピアノを始めたいという相談が全国から多く寄せられるようになりました。各地に散らばる音楽家仲間を通じて、ひとりひとりに指導者を仲介し、スムーズに指導が受けられるようサポートしました。

この大会に出場者・観客として訪れる障害者のために、横浜市がボランティア・グループを育成してくれたことは、大きな助けでした。サッカーのワールドカップでボランティア活動に参加した人々を集め、車いすの押し方、白杖の人のガイドの仕方などの事前トレーニングを重ねてくれたのです。大会の当日には、横浜駅から会場のみなとみらいまで、街頭にずらりとボランティアが並んでくれ、本当に心強く感じました。横浜市はさらに、障害者のガイドのためのパンフレットも作成してくれました。今から12年前のことです。画期的なことだったと思います。

アーツサポ東京
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第2回、第3回大会は、海外で開催されたのですね。

迫田

「ピアノパラ」は、パラリンピックと同じように、4年に一度、世界中のいずれかの都市で、開催されます。

第2回は2009年に、カナダのバンクーバーで、12カ国から76名の出場者を迎えて実施しました。車いすユーザーのバンクーバー市長が最初に大きな理解を示してくださったことも功を奏して、大学と市内の楽器店が全面的に協力してくれ、初めての海外での大会もスムーズに運営することができました。バンクーバーの街には車いすを始め障害者の姿が多くみられ、ストリートパフォーマーもいれば、健常者相手に派手なケンカをしている人もいます。街の人々が障害者に対してとても親切なので、感心しました。大会にも多数の障害者が観客として足を運んでくれました。

第3回は2013年に、オーストリアのウィーンで開催しました。東欧をはじめヨーロッパからの出場が多く、19カ国の48名が、ウィーン最古の教会で、ミサの日などをはさんで3日にわたり演奏しました。この大会の課題曲は、ヨーロッパ統合のシンボルともされるベートーベン交響曲第9番の「歓喜の歌」のテーマでした。いろいろな文化の人々が集まって、いろいろな演奏をし合い聴き合うことの喜びを、深く感じましたが、特にドイツの少女の独創性あふれる演奏は、感動的でした。

私は、出場者の演奏に優劣をつけることには抵抗を感じるのですが、“賞”はマスコミに受け、受賞者のその後の活躍に直結します。それで、ウィーン大会では初めて、金賞、銀賞、銅賞を授与しました。入賞者は自国で注目を浴び、ギャラのとれる演奏家になることもできます。その点で、当初から意図してきた、実力がすべてのピアノの世界に入る道筋をつけることができたわけで、自立生活の実現にもつなげられたと考えています。

アーツサポ東京
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「ピアノパラ」の活動を通じて、どのようなことを感じ、考えてこられましたか。

迫田

すべての障害種別の人々が、それぞれの能力を活かして、それぞれの方法でのピアノ演奏を披露する場とすることを、初回からずっと意図してきました。聴覚障害者は、はだしでペダルを踏んで振動で音とリズムをキャッチする驚くべき能力を持つこと、弱視の人は光るものへの集中力がとても高いので、この特性を練習に取り入れることで効果を上げられること、また、知的障害のある人もそれぞれの性質・行動特性を理解できれば指導や対処に活かせることなど、障害種別に関する特色もわかってきました。

ピアノは、実力のみで勝負できる世界です。指導者の(自己流でなく)正確な知識に基づく指導と、良質な発表の場(会場、ピアノ、観客など)の二つが、とても重要な要素です。優れた教師はまるでマジシャンのように、隠れていた才能を引き出し、無二の魅力として開花させることができます。

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「ピアノパラ」のめざすものは、何でしょうか。

迫田

有名なピアニストを育て、その人がビルを建てるほどにピアノで稼ぐようになることが、私の夢です。実力だけで勝負することのできるピアノは、そのための道具です。「本物」でさえあれば、誰もが実力で勝負できるのです。

日本には、八橋検校や、宮城検校と呼ばれる宮城道雄をはじめとして、視覚障害者の伝統音楽の歴史があります。実力さえあれば、障害の有無など無関係に尊敬するのは、日本人の良さだと思います。それが難しい国もあることを知っているからです。

今の時代は国際的に認められることが重要なので、どんなジャンルの芸術も発展のためには、普遍性を持つことが不可欠だと思います。日本の伝統音楽・芸能も、世界の人々に受け入れられ、質の高さを認められていくよう、伝統芸術の本質を守りながらも、新しいアイディアで開拓していくと良いと思います。

アーツサポ東京
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今後の展開について、お聞かせください。

迫田

2018年4月に、アメリカの首都ワシントンで、第4回大会を開催します。すでに出場が内定している日本代表の紹介と、新たな出場者を決める選考会を兼ね合わせて、11月29日に神奈川県相模原市の相模女子大グリーンホールで、演奏会を開催します。

今回ももちろん、すべての障害種別の人に出場してもらいます。障害から生まれた独創的な演奏を評価したいと思います。ピアノソロの他、本人が中心となるアンサンブルや、弾き語りでも良いですし、演奏ジャンルは自由です。ただ、趣味としての演奏でなく、プロを目指す人を歓迎します。多くの方々に出場いただき、また演奏をお聴きいただきたいと思います。

アーツサポ東京
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最後に、芸術文化活動を始めてみたいと思う障害のある人々に、メッセージをお願いします。

迫田

ピアノは、どんな障害を持つ人もそれぞれのやり方で演奏し、楽しむことのできる楽器です。ある時、看護師さんに求められて病院に出向き、手足を動かすことができず酸素吸入器をつけてベッドに横たわるお子さんに、ピアニカに息を吹き込んでもらったことがあります。自分の吹いた息で奏でられるメロディーを聴いて、とても嬉しそうな表情を見せてくれました。子どもの生きる力になりましたと、ご家族にも喜んでいただけました。サポーターの力、そして技術の力を借りながら、どんな方にも何らかの方法でピアノを演奏する喜びを味わってほしいと考えています。ピアノを弾いてみたいという方、あるいは演奏を聴いてみたいという方は、是非「ピアノパラ」にご連絡ください。

相談対応

さまざまなご質問やご相談に応じています。

ダンスのレッスンに参加したい
舞台で音楽を奏でたい
手話で演劇をしてみたい
展覧会に作品を出品したい
――など表現活動に関すること

音声ガイド付きで映画を観たい
手話や字幕ガイド付きの演劇を観たい
視覚障がいの子どもたちが美術作品を鑑賞できる機会をつくりたい
――など鑑賞に関すること

公演や展示会を企画してみたい
アトリエ活動を始めたい
催しものに障がいのある子どもたちを招きたい
障がいのある人々に向けた舞台作品を作りたい
――など企画運営に関すること

どんなご質問・ご相談も、歓迎します。

日本ろう者劇団のプロ俳優として豊富な経験を持つ複数の相談員がご質問・ご相談をお待ちしています。

アーツサポ東京で直接にお応えできないご質問・ご相談には各分野の外部専門家のご協力を得つつお応えします。

メール、電話、またはファックスで、お気軽にご連絡ください。

社会福祉法人トット基金 アーツサポ東京
〒141-0033 東京都品川区西品川2-2-16 トット文化館 2F

TEL: 03-3779-0233(平日9:00~17:00)
FAX: 03-3779-0206
URL: http://artssup-totto.org
E-MAIL: info@artssup-totto.org


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